「猫」を使ったフランス語の表現10選

前回の記事では、【「犬」を使ったフランス語の表現10選】をまとめましたが、今回は、「猫(chat)」を使ったフランス語の表現やことわざ10選をまとめてみました。

日本語でも「猫にまたたび」や「猫に小判」など「猫」にまつわる表現がたくさんあるように、フランス語にも「猫」を使った表現がたくさんあります。

avoir un chat dans la gorge

「(声が)しゃがれた、かれた」という意味の表現。「gorge」は「喉」という意味なので、直訳すると「喉に猫がいる」になります。

11世紀の終わりに、凝固した牛乳のことを「maton」と呼び、次第に「(様々な)ダマ」のことを意味するようになり、この表現の起源となる「avoir un maton dans la gorge」という表現が生まれました。それから少しづつ、言葉遊びで、「maton」が「matou(去勢していない)雄猫」に似ていることから、「maton」が「chat」に置き換わり、「avoir un chat dans la gorge」という表現になったようです。

風邪を引いていて喉が痛い時などに使える表現ですね。

faire une toilette de chat

簡単に洗う(身支度する)」という意味の表現。「toilette」は「身支度、洗面」という意味。猫はお風呂に入ったり、シャワーを浴びたりすることを好まず、水をあまり使わずに自分の脚で顔をちゃちゃっとこすって、時間をかけずに簡単に洗うことから、すばやく身支度を済ませる時に、この表現が使われます。

écrire comme un chat

小さな字で書く、読みづらい字で書く」という意味の表現。直訳すると「猫のように書く」です。猫は爪で引っ掻くことが大好きなので、猫が爪でなぐり書きをするように、人間が読みづらい字で書くことを「猫のように書く」といいます。

appeller un chat un chat

率直にものを言う」という意味の表現。直訳すると「猫を猫と呼ぶ」になります。日本語では「歯に衣着せぬ」、英語では「call a spade a spade(鋤を鋤と呼ぶ)」と同じ意味です。

フランスの詩人であるNicolas Boileauが自身の作品「風刺詩集」(Satires、1666年)の中で「J’appelle un chat un chat, et Rollet un fripon」と書いたのが起源のようです。Rollet は Charles Rollet のこと。

avoir d’autres chats à fouetter

他にもっと大事なことがある、他にしなくてはいけないことがある」という意味の表現。直訳すると「鞭で打たなくてはいけない猫が他にいる」になります。

17世紀に生まれた表現で、同じ意味として、イギリスでは「have other(bigger) fish to fry(仏:avoir d’autres poissons à frire、訳:揚げないといけない魚が他にいる)」という表現が使われているようです。フィッシュ&チップスで有名なイギリスらしい表現ですね。

pipi de chat

つまらないこと、まずい飲み物」を意味する表現です。「pipi」は「おしっこ」という意味なので、直訳すると「猫のおしっこ」です。猫はおしっこをちょっとしかしないことから、この表現が使われているそうです。

donner sa langue au chat

熟慮するのをやめる、あきらめる、降参する」という意味の表現。直訳すると「猫に舌をあげる」になります。

もともとは、フランスの貴族であるセヴィニエ夫人が使った表現「jeter sa langue aux chiens(犬に舌を投げる)」が起源。昔、人々は食べ物の残り物(役に立たない物)を犬に与えていたことから、「答えが分からない」=「役に立たない舌」という意味で「犬に舌を投げる」という表現が生まれたそうです。

そこから少しずつ変化していき、19世紀には「donner sa langue au chat(猫に舌をあげる)」という少し和らいだ表現になりました。猫は教養があり、秘密を守る動物と見なされていたいたので、猫に舌をあげて答えを教えてもらうというような意味合いです。

なぞなぞやクイズの答えが分からない時に「Je donne ma langue au chat(降参する)」と言って、答えを教えてもらいます。

(参考:Wiktionnaire

acheter chat en poche

15世紀に現れた表現で、「商品の中身や品質、状態を確認しないで買うこと」を意味します。「poche」はここでは「sac(袋)」という意味で使われているので、直訳すると「袋の中の猫を買う」という意味になります。

同じ意味の表現に「acheter chat pour lièvre」という表現もあります。直訳すると「野ウサギのために猫を買う」です。「chat(猫)」と「lièvre(野ウサギ)」は大きさは同じですが、「野ウサギ」の方が希少価値が高く、袋の中身を確認しないで買った結果、「野ウサギ」買ったつもりでも、実際に袋の中に入っていたのは「猫」だったということから、この表現が使われています。

売り手に騙された買い物をさせられた時や自分の確認不足で買い物に失敗した時などに使う表現です。

ちなみに英語では「a pig in a poke(袋に入った豚)」と言うそうです。

à bon chat, bon rat

同等の強さを持った敵対者」という意味のことわざ。直訳すると「良い猫に良いネズミ」になります。

16世紀から使われていることわざで、猫がネズミを捕まえようとするけど、ネズミも猫から逃げることを学ぶので、相手の強さに順応して、相手と同等の強さを身につけるということから、この表現が使われるようになったようです。

Quand le chat n’est pas là, les souris dansent

怖い人や気兼ねする人がいない間に、くつろいで息抜きすること」を意味することわざ。日本語では「鬼の居ぬ間に洗濯」といいますね。フランス語では「猫がいない間にネズミは踊る」といいます。ネズミにとって猫は大敵ですもんね。

フランスでは「猫がいないとネズミが悪さ(いたずら)をする」という意味合いが強く、例えば、親や学校の先生の監視がない時の子どもの態度を形容する時などによく使われます。

以上、

「猫」を使ったフランス語の表現10選をご紹介しました。

ここでご紹介した以外にも、まだまだ色々な表現がありますが、ここでは私が「面白いなぁ」と思った10つの表現をご紹介しました。

表現の由来を知ることで、より理解も深まるし、覚えやすいですよね。

是非、フランス語学習の参考にもしてみてくださいね。